クルアーン:やさしい和訳(水谷周、国書刊行会)を読みました。
アメリカへのテロやフランスでのテロなど、イスラム教には過激なイメージがあると思うかたも多いと思いますが、クルアーンを読む限りは、その過激さは一部の集団に限られるのではないかなという気がします。
それくらい、常識的な諭しがちりばめられた書です。
もちろん一神教ですし、21世紀を生きる日本人の私たちの目から見たら???と思う箇所も散見されますが、ほとんどのところは「うんうん、なるほど、そういうことね」「そういう考えもあるかもね」と感じられる内容です。
というか、私の目から見たら結構誠実な生き方を奨励しているという印象を受けます。
面白いなぁと思ったのは、以下のような世界観。
- 人は弱く作られている(だからアッラーに庇護を求めよ)
- 善悪は人間には判断できない(いやなこともアッラーからの啓示かもしれない)
- この世は仮の世界(最後の審判のための徳を貯める時間)
- 恵まれるものは忘れ、困難にあるものは嘆願する(常に信仰せよ)
ここだけ引っ張ってくると、何となく仏教にも近いものがあると思えてきます。
(人は苦しむ存在、善も悪もない、解脱…)
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旧約聖書や新約聖書との関連も多数出てきます。
クルアーンでは、キリストも預言者のひとりと考えており、一神教ではあるものの、ユダヤ教やキリスト教徒の親和について、意識的に余地を残しているようです。
どのくらい関連しているかは、以下の預言者一覧をご参照ください。
イスラム教預言者一覧、()内の名前は、聖書表記。P614より
- アーダム(アダム、人類の初めであり、預言者の初め)
- イドリース(エノク、19:56,57 21:85)
- ヌーフ(ノア、ノアの箱舟で知られる)
- フード(エベル、アラビア半島南部のアードの民に使わされたアラブ人)
- サーリフ(アラビア半島北部のサムードの民に遣わされたアラブ人)
- イブラーヒーム(アブラハム、一神教を再興した預言者として重視される)
- イスマーイール(イシュマエル、イブラーヒームの長男でアラブ人の祖)
- イスハーク(イサク、イブラーヒームの次男でユダヤ人の祖)
- ルート(ロト、イブラーヒームの甥、パレスチナ北部カナーン地方の町サデゥームに遣わせられた)
- ヤアクーブ(ヤコブ、イスハークの息子、別名イスラーイール)
- ユースフ(ヨセフ、ヤアクーブの12人の息子の一人で美男子)
- シュアイブ(ナジュド地方窓やんの町の「森(アイカ)の人たち」に遣わせられたアラブ人)
- アイユーブ(ヨブ、忍耐の人として知られる)
- ムーサ―(モーゼ、ユダヤ教の「立法」を授かった)
- ハールーン(アロン、ムーサーの兄)
- ズー・アルキフル(エゼキエル、21:85,38:48に言及される)
- ダーウード(ダビデ、イスラエル王国の王、「詩編」を授かった)
- スライマーン(ソロモン、ダーウードの息子、エルサレム神殿を建設)
- イルヤース(エリヤ、6:85 37:123-132)
- アルヤサア(エリシア、紀元前9世紀、ユダヤ王国の混乱を収めた)
- ユーヌス(ヨナ、魚に飲み込まれた人として知られる)
- ザカリーヤー(ザカリア、マルヤムの保護者)
- ヤフヤー(ヨハネ、ザカリーヤーの息子で、洗礼者)
- イーサー(イエス、キリスト教の「福音」を授かった)
- ムハンマド(クルアーン中では、アフマド。61:6)
ということで、次は新約聖書物語を読んでみようと思います。
■旧約聖書物語(犬養道子、新潮社)
クルアーン物語とかないのかな。