夢酔独言(勝小吉、講談社現代文庫)


夢酔独言』(勝小吉、講談社現代文庫)を読みました。

兆民先生』に引き続き、『困難な成熟』(内田樹、夜間飛行)で紹介されていた一冊です。

いやはや、とんでもねぇ野郎ですよ勝小吉(夢酔)さん。
クレイジーすぎるだろ。

正直いえば、言葉遣いなどが現代とは少々ちがっていて、何を言っているのかわからない箇所もいくらかありましたが、ぶっ飛び加減は嫌でも伝わってきます。
いやだって、この人どう考えても、カタギではないよね。
間違いなく、その筋の人ですよね?
大物、なんだろう…か?
いや、まぁ大物なんだろうなぁ…。
7歳で喧嘩に負けて切腹しようとする子どもはあんまりいない(否、聞いたことない)ものね。
(14歳で8ヶ月乞食しながら旅をする子どももそういないでしょうし、その上もう一回逃げるように旅に出て座敷牢に入れられる青年もあまりいないでしょう)
そしてその精神を40才近くまで持ち続けるんだからなかなかいるわけない。
(いや、江戸時代にはそこそこいたのか?)
それでいて、「俺を真似しないようにくれぐれも気をつけろ」だからやっぱりとんでもない人ですよ。
奥さん、大変だったでしょうね…。

ーーー

本文を読み終えて、年表を見てみると、初見なら絶対に「え?」となりそうな出来事も、あぁこういうことだったのか、と穏やかに読めてしまうから不思議です。
いや、その年表に記載されている内容も、とんでもなことばっかりなんですけどね。

本文はなかなか読むのがしんどい感じの流れとなっていて、そのたどたどしさがまた無骨というか無頼というか、読者に媚びない感じを出してる気がしました。
だから悪いやつなのに、時々、ちょっといいやつ?なんて思ったりしてしまうこともある。
(まぁ実際いいことしているときもあります。映画版のジャイアンみたいなかんじですかね。親分って感じです)
それから、読んでいるとなんとなく江戸時代に来ちゃったような感じがします。
内田先生が『困難な成熟』でいう、グルーヴ感というのは、上のように読んでると「意識が時間・空間を超えちゃう」ということを指しているのかななんてことを思いました。

江戸っ子というにはあまりにアウトローすぎて江戸の人に失礼なんでしょうけれど、江戸っ子っぽい(と私が思っている)両津勘吉をもっと悪い方に持っていくとこういう感じになるのかな。

ーーー

解説を読むと、こんな父親を持ったことで、息子勝海舟も小さい頃は癇癪持ちとして知られていたとの記載がありました。
勝海舟については、せっかく『氷川清話』でいいイメージができていたのに、また残念な感じになってしまった。
(とは言え、いろんな見方があるでしょうから、しょうもない人と断定することも控えましょう。)

ーーー

個人的に心に残ったのは、ある老人の言葉。
「世の中は恩を怨で返すが世間人のならいだが、おまへは是から怨を恩で返して見ろ」
素晴らしすぎて歯がゆいくらいですが、夢酔はこの言を受けて「なるほど」とその通りにして色々なことがうまく回るようになったそうです。
「んなあほな!」と思いながらも、なんとなく微笑ましく読めてしまうのが、夢酔さんの魅力の一つなのかなぁと思いました。
キャラですね。

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