会社を変える分析の力 (河本薫、講談社現代新書)
会社を変える分析の力 (講談社現代新書)
『会社を変える分析の力』を読みました。
時々業務で分析を行う私には、大変面白かったです。
ポイントは、技術よりも感性という点です。
やっぱりクリエイティブでないとだめということですね。
小手先の技術だけなら、だれでもできる。誰でもできないことをやっていかないと、プロフェッショナルにはなれないし、会社を変える分析にもならない、ということをずーっと書いていた。
反論の余地はありません。
そして、指摘はいちいちためになります。
今後私も大学関係者として色々な分析を担当することになるかもしれないので、そうなったら座右の書になるでしょう。
「その分析がうまくできるとどうなるのか?」これを問い続けて業務に当たらなくてはなぁと思いました。
とはいっても、意思決定を行う人にも影響されるのが痛いところ。
プロフェッショナルは、そこもクリアしてこそなのでしょうけど、それはなかなかヘビーな仕事です。
さて、本書は、分析を中心として書かれていますが、本書の指摘は、何も分析だけに限定したことではないと思います。
本書の「分析」という言葉を「仕事」という言葉に置き換えても何ら齟齬は生じないと思われます。
例えば、
・成果を見据える
・トライアルアンドエラー
・オリジナリティ
・コミュニケーション力
・シンプルイズベター
などなど、いずれも分析だけでなく、あらゆる仕事に必要なことのように思います。
そう考えると本書はいたって平凡な内容という評価もできるかもしれませんが、読んでみると著者のこれまでの経験をもとにそれらが再構築された上で話が展開されるため、非常に腑に落ちやすい印象を持てます。
そこら辺のビジネス書とは違い、挫折と苦労の形跡が見えるのもいい。
多分この方、文章がうまいんだね。
そして、おおよそ文章がうまくないと、分析結果を相手に飲み込ませることなどできないのでしょう。
著者もとにかく文章を書けと指南しているように、相手にもわかる文章を書くということを常日頃やっていることが、仕事にも役立つし、役立つからまた書くし、といういいサイクルを生み出しているのでしょう。
また、いいこと言っているなぁと思ったのは、書くことで自分の考えが整理されていく、また、理論の綻びも見つけられるという指摘です。
たしかにね。
考えを書くというよりは、書いたことが自分の考えになる、というのに近いのかもしれません。
世の中全体がIT・データサイエンスという方向に向かいつつある今だからこそ、分析にあたっての心得を整理した本書は、ぜひ多くのひとに読まれるべき一冊だと思います。
ーーー
データサイエンス入門 (データサイエンス大系)は、なかなか読みやすかったです。
本当に基本のき、という感じ。
会社を変える分析の力も、本書の中で紹介されて読んだものです。
実務的な話に興味がある方は、下の本もおすすめです。
ただし、少し進めてみるとわかりますが、「どう分析するか」よりも「何を分析すれば、何がわかりそうか」という問いを立てることのほうが重要です。
ツールはどんどん進化していますから、統計の知識なんてなくても解析ができる時代になっています。
だから、問いを立てる力(課題発見能力)が必要なのですが、それはやっぱりいろいろなアンテナをはって(コミュニケーション能力、クリエぃティビティを発揮して)、日々の業務に取り組むということが大事なのかなぁと思います。
30代子持ち男性サラリーマン。
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