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五重塔(幸田露伴、Kindle無料本)



五重塔(幸田露伴、Kindle無料本)』を読みました。
面白く読めました。
幸田露伴は2冊め。
幸田露伴1867-1947(幸田露伴、筑摩書房)

本書は、雑にまとめてしまえば、「堅物どもの美談」です。
登場人物らはとても清々しい人々ではあるものの、十兵衛の仕事観には、池井戸潤作品のような仕事至上主義の感が漂っていて気になります。
表面上は時代錯誤と言えるでしょう、と言いたい。

ただし、それぞれの人々の立ち振舞には感ずるところが多いと思いました。
それぞれの章において、十兵衛、源太はもとより、上人様、お吉、清吉、などなど、個々人が自分で考えてその場で己がすべきだと思われる立ち振舞をし、それにともなう事態については己でしっかり責任を取ろうとする様子が見て取れます。
だから、たとえ個々人の言動が少し自分の感覚とは違っていても、「なるほど彼(彼女)はそう思って、そう動いたのだな」ということがわかるし、周りの登場人物らもそれをわかっているし、多分著者の幸田露伴もそこ(主体的な人間たち)をわかりやすく表現したかったんではなかろうか、と思いました。
(そういう意味でも、とても池井戸潤作品ぽい感じがします)

「恥」という尺度を道徳的に適用する日本人のいい側面が描かれているように感じました。
個人的には、上人様と源太が好きです。

読み終わったときには、無性に熱燗が飲みたくなる本でした。

  

古典がもっと好きになる(田中貴子、岩波ジュニア新書)



古典がもっと好きになる(田中貴子、岩波ジュニア新書)』を読みました。
国文学者の著者が、「文法なんて知らねぇよ。いいから読め」(とまで口悪くはないですが)とぶち上げる痛快な本です。
古典や古文を味わいたいという人には非常に実際的な内容が書かれています。
とても面白かったです。

上の表現は私の超訳で、本書ではもっと穏やかに次のようなことが書かれていました。

文法も不要ではないけれど、そればっかりでは古典の面白さはわかりません。
声を出して読み、何度も読み、そうしているうちに意味が分かってきて、文脈がわかってきて、そして現代にも通じる面白みがあることに気づいて古典と親しめるものです。

…ということです。
「古文は外国語ではなく、昔の日本語」なのだから、あまり肩ひじ張らず、自然体で楽しみましょうね、というスタイルで古典と付き合うことを勧めていました。
私も昨年『大鏡』を読んだ際にはとてもおもしろく読めたので、本当にそう思います。
古文が嫌いで古典を敬遠している人は、もったいないと思います。
時代の風雪に耐えて今もある書物には、何かしら感ずるところがあること請け合いです。
だから、現代語訳でもいいから、興味があれば読んでみるといいと思います。
1000年前の文学だからって、そんなに偉いもんでもないと思って、週刊誌の連続小説を暇つぶしに読むくらいの感覚で付き合えばいいのではないでしょうか。
もちろん読まなくたって生きていくのに不便はありません。
だから、古典・古文なんていうのは趣味の世界なのです(と言ったら専門家の方は怒るかもしれません。ということで、これは私見です)。
でも、古典・古文に親しめば、気軽にタイムスリップができます。
それが人生を豊かにしないなんてことがありますでしょうか?

我が国は単一国家としての歴史も長く、様々な文化が連綿と続いてきた社会に生きているわけですから、この国でしか味わえない”スルメ”的学問が多くありますす。
その一つがまさに古典・古文ではないかと思うのです。
そして、そういうスタンスで様々な古典・古文の資料と向き合える人が多ければ多いほど、学問としてはよいはずです。
まだまだ現代語訳を待っている多くの古文が古本屋や納屋の奥に眠っています。
それを現代の光にあてる人材を増やすのに、本書は大きな寄与をするのではないかと、読みながら思いました。
このさい、古典文法は頭のなかから追い出してください。それより、日本人の心の宝、文化の泉である古典の一節を、わけもわからないまま暗唱するほうが将来の教養のためにはいいと思います。口をついて出る言葉、それは脳のどこかにしっかりとしまわれてあなたの心の血肉となることでしょう。(P53)
確かに、ちょっとキザな感じもしますが、さらりと場に即して暗唱できたら、場を盛り上げることもできるかもしれませんね。
そんなわけで、私はとりあえず、百人一首から始めようかと思います。

幸田露伴1867-1947(幸田露伴、筑摩書房)



幸田露伴1867-1947(幸田露伴、筑摩書房)』を読みました。
少ししんどいところもありましたが、面白かったです。
『貧乏』は江戸っ子の語り口が面白く、『突貫紀行』は徒歩旅行をしたくなります。
『蒲生氏郷』は重かったけど、伝記らしく、その人の周辺の世界がわかり、伊達政宗や豊臣秀吉の人柄が呑み込みやすい形で表現されていて、読み終わったときには少しさわやかな気持ちになります。
ところで、武士の世界の倫理というかルール、規律のようなものも、なるほどこういうことだったのかと合点がいった部分も多かったのが印象的でした。
いやはや、武士の世界とは、不良の世界ですね。

それから、個人的には『野路』という話が好きでした。
幸田露伴のイメージからは全然想起できないような、春の温かい、パステルカラーのゆったりとした世界が描かれています。
そして、そんな春の休日で、のんびり散歩しながら野草を食べて歩くというのはなかなか乙ですね。
酒が飲みたくなってしまいます。

解説の人も書いていましたが、幸田文の「父・こんなこと」を読む限りは堅物の父親のイメージがあったので、本書を読んで全体的に人情味のある、明るい内容が多かったのがいい意味で予想外でした。
父こんなこと(幸田文、新潮文庫)
(幸田文の文体と重なる部分が散見され、ちょっとほっこりしました)

ということで、次は代表作『五重塔』を読みたいと思います。


 

辞令交付式への違和感(みんなよく参加するなぁ)

 今日は4月1日。  我社では辞令交付式が行われました。  そのため、土曜日ですが、人事課員として出勤しました。  明日も仕事なので、12連勤となります。   人事課の闇ですね。  それはさておき、辞令交付式に関して、毎年違和感を持ちます。  それは、お礼を言われる側が、何故かホ...