菊と刀 (ルース・ベネディクト、講談社学術文庫)
菊と刀 (ルース・ベネディクト、講談社学術文庫)を読みました。
面白かったです。
本書のタイトルは「日本人は圧力をもって菊をあたかも自然にあるように、育てる。そして、自身を刀と捉えてその美しさを保つところに美意識を感じる」ということを表しています。
本書はそのことを様々な角度(歴史、生活様式、教育、など)から分析している本です。
至る所に「あー、確かに」「なるほど、そう考えれば筋が通るな」という点が多々ありました。
これで一度も日本に来ていない人が書いているのだから信じられません。
解説者も書いていましたが、是非日本に来て直に観て、追加の分析をしてほしかったものです。
驚くべきは、アメリカが戦勝後に日本を占領するにあたり、どのような統治を行うべきか、その研究を進めていたのに対し、日本においては、そのような話は一切聞かないことです。
そういう話はあったのでしょうか。
大東亜共栄圏の発想の下には戦勝後のアジアにおける統治の構想はあったのかもしれませんが、アメリカを占領してカナダやメキシコとの関係をどうしようなんて構想があったというのは聞いたこともありません。
その差が全く戦果に影響を与えなかったということは、おそらくないと思われます。
ところで、この本を読んだ今でも、日本がアメリカを統治しているイメージが全く持てません。
アメリカでは個々人が強いから、指導者層だけを操ってもダメでしょう。
ということで、アメリカが日本を統治したやり方では、おそらくアメリカを統治することはできないと思えます。
果たしてアメリカという国は、どうやったら占領できるんだろう。
(誰か考えた人の本があるなら読んでみたいです)
ーーー
著者は、先の戦争は、日本が自分のいるべき位置を確認するための戦争だったといいます。
なるほどそうかもしれないという気持ちになりました。
日本人は自分の治まりどころがわからないと、非常にストレスを感じるのが一般だというのは全く違和感ありません。
この辺は『スクールカースト』にも通じるものがありますね。
■教室内(スクール)カースト(鈴木翔、光文社新書)
なまじ日清、日露で買っちゃったから、どこまでつきすすむべきなのか、分からないまま、いけるところまでやってしまった、という事なのかもしれません。
そして、限界が来たら(敗戦において)、ここが限界だと気づいて、すぐに方向転換してしまう性質も私たちの特徴のようです。
結構図太い民族のようです。
これらは、恥の文化(西洋の罪の文化との対比)にその一因があることも指摘されていました。
また、この本で指摘されるまでは当たり前すぎて気にもとめなかったことがいくつもありました。
例えば、義理と義務、人情、歴史、誠(まこと)など、欧米人はこういう見方をするのか、というさわやかな驚きを何度も経験できます。
全く意識せずにこれらの運用を私たちがしてきたということも目から鱗でした。
異文化理解とは、つまるところ、こういうことではないでしょうか。
他者から見た自己を理解し、その差異にスポットライトを当てて自他を理解する。
そして、外国語でなければ光を当てることのできない箇所がある、という点に、外国語を学ぶ意味があるのではないかと、そんなことを思いました。
■英語教育の危機(鳥飼玖美子、ちくま新書)
本書を読んだからどうなる、という事ではないのでしょうけれど、本書を読んだ人と読んでいない人とでは、日本人としての自分の行動原理への理解度が大きく隔たれるのではないかと思います。
自分の行動原理が理解できたからと言って、得するもんでもないのでしょうけれど、気心のしれない他人と接する際に自分を律することに対しては、いくらか役に立ちそうな気がします。
本書は、解説もなかなかいい感じでした。
読みながら、なんとなくもやもやしていたものについて、詳細に解説しくれました。
ぜひ、解説もご一読をおすすめします。
30代子持ち男性サラリーマン。
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