教育が子どもから自主性を奪う:【書評】反教育論(泉谷関示、講談社現代新書)



反教育論(泉谷関示、講談社現代新書)を読みました。
面白かったです。

内容としては、いかにして自主性をはぐくむかという点にあると私は感じました。
基礎教育にこだわったり、何でもレールを引いてあげたりすることで、いかに個人の自主性がなくなっていくのかといった内容です。
本書の内容は、かなり根本橘夫氏の『「いい人に見られたい」症候群』等の著作につながるものが多い印象を持ちました。
いずれも「自分を持て」というメッセージを発しているように私は感じます。
『「いい人に見られたい」症候群』がどうやって「自分の持つか」という方法が主だったのに対して、本書は「なぜ自分を持てなくなるのか」という根本原因を深堀したような感じでしょうか。
また、様々な先人からの引用や現代社会とのつながりなども絡めて説明するため、「自分を持てなくなる背景」がより鮮明になっている感じがします。

自主性の育て方

本書には、「自主性を育ませたいなら、自主的にさせておかなくてはならない」というロジックが底流しています。
なるほどその観点で行くのであれば、私たち大人は「どうにか子どもをコントロールしないように」自律しなくてはいけません。
そして、私たち大人から逃れるべき機関である学校にもそのことを求めなければなりません。
そのためにも、自主性は外から育てることはできないということを認めることが必要です。
「いい距離で見守る勇気」、大人にはこの勇気が求められているようです。

子離れが大事

そういう意味では、本書は、子育てをしている方にとっては、結構きつい本かもしれません。
例えば、幼児教育やいい学習環境が子どもを必ずしも成長させるわけではないなど、親としてはしてあげたいことが子どもの成熟には却ってマイナスに働くというような主張も多いです。
逆に、親に嘘をつけないと子どもは成長しないという主張も、親的には少し「えっ…本当に?」と思ってしまうでしょう。
ただ、「無菌状態で育てれば、弱い子になる」と言われてみれば、私としてはよくわかります。
極力親は介入せず、子どもが大けがしないように見守ってあげることが、親のしてあげられる最大限のことなのかもしれません。
そういう点からみると、ぜひ子育てに自信を持っている人にこそ読んでほしい一冊です。
(まぁ自信を持っている人はこういう本を読まないと思いますが)

逆に、子育てにへとへとになっている人にはいいかもしれない。
本書を読めば、子どもはうっちゃっておいてもいいかもと思えると思います。
親がかかわらないほうが、子どもが成熟するのですから。
あとは、親が何か没頭できる遊びのようなものを持っているほうが、子どももそれをまねるかもしれないので、そういう時間を作ってもいいのかもしれないと思えるかもしれません。
そういう意識を持っておけば、少なくとも、子どもが何かに没頭していることを容認できるはずです。
また、子どもが集団の中で浮いていたり、先生から疎まれたりしていたとしても、ひょっとしたら自分で考えることのできる子どもなのかもしれないとポジティブに考えることができます。
(もちろん人を傷つけるというようなことは許されませんが)
こういう風に見ていくと、子育てや教育というのは、そんなに難しいことではないように思えます。

といった感じで、人によっては少し肩の荷が下りる本です。


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