モモ (Mエンデ、岩波少年文庫)



モモ (Mエンデ、岩波少年文庫)』を読みました。
時間とはどういうものなのかを考えさせられます。
1973年に書かれた本ですが、まさに今ここで読まれるために書かれた本だと思わせる一冊です。

物語ですから、読んでみないと内容はわかりません。
誰かから聞いてもピンとこないし、端的に言えば「時間泥棒と女の子が戦う話」ですが、これだけではこの物語の核には触れることができない。
でも、読んでみれば「生きていくうえで大事なことってどんなことだったっけか」、と考えるために立ち止まるきっかけをくれることでしょう。
子ども向けの本という設定ですが、忙しい大人こそ読むべきと思います。

仕事で体調を壊しかけている私には、ベッポという掃除夫のおじさんの言葉が印象的だったので、長いですが、引用します。

「なあ、モモ、」とベッポはたとえばこんなふうにはじめます。「とっても長い道路をうけもつことがあるんだ。おっそろしく長くて、これじゃとてもやりきれない、こう思ってしまう。」しばらく口をつぐんで、じっと前のほうを見ていますが、やがてまた続きます。「そこでせかせかと働きだす。どんどんスピードを上げてゆく。ときどき目を上げてみるんだが、いつ見てものこりの道路はちっともへっていない。だからもっとすごいいきおいで働きまくる。心配でたまらないんだ。そしてしまいには息がきれて、動けなくなってしまう。道路はのこっているのにな。こういうやり方はいかんのだ。」
ここでしばらく考え込みます。それからようやく、さきをつづけます。
「いちどに道路ぜんぶのことを考えてはいかん。わかるかな? つぎの一歩のことだけ、次の一呼吸のことだけ、つぎの一掃きのことだけを考えるんだ。いつもただつぎのことだけをな。」
またひと休みして、考えこみ、それから
「するとたのしくなってくる。これがだいじなんだな、たのしければ仕事がうまくはかどる。こういうふうにやらにゃあだめなんだ。」
そしてまたまた長い休みを取ってから
「ひょっと気がついたときには、一歩一歩すすんで来た道路がぜんぶおわってる。どうやってやりとげたかは、じぶんでもわからんし、息もきれていない。」
ベッポはひとりうなずいて、こうむすびます。
「これがだいじなんだ。」
(P52)

時間泥棒はまだいなくなっていません。
奴らは、いつでも、そこかしこから現れるのだということを知ること、それが豊かな時間を生きることにつながると思えます。

0 件のコメント:

コメントを投稿

辞令交付式への違和感(みんなよく参加するなぁ)

 今日は4月1日。  我社では辞令交付式が行われました。  そのため、土曜日ですが、人事課員として出勤しました。  明日も仕事なので、12連勤となります。   人事課の闇ですね。  それはさておき、辞令交付式に関して、毎年違和感を持ちます。  それは、お礼を言われる側が、何故かホ...